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米議会上下両院合同会議での演説を終え、議員らと握手を交わす岸田文雄首相(中央)=2024年4月11日午前11時47分、米ワシントン、岩下毅撮影
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 訪米中の岸田文雄首相が11日午前(日本時間12日未明)、米連邦議会の上下両院合同会議で演説した。上下両院合同会議での演説は、日本の首相としては、2015年の安倍晋三元首相以来、2人目となる。米議会は首相の演説をどう受け止めたのか。

米議会での演説で、岸田首相は日本を「米国のグローバル・パートナー」と打ち出しました。記事後半では、議場で演説を聴いた米議員の感想を紹介しています。

  • 「米国は独りではない。日本は共にある」 岸田首相が米議会で演説

 演説の冒頭、首相が「日本の国会では、これほど素敵な拍手を受けることはまずありません」とジョークを飛ばすと、会場は大きな笑いと拍手に包まれた。小学校時代にニューヨークで過ごしたことを、当時の人気アニメ「原始家族フリントストーン」にも触れて披露し、再び笑いを誘った。

 いま米議会が超党派で大きな関心を寄せるのが、軍事や経済、先端技術などをめぐる中国との競争だ。岸田氏は「中国の姿勢や軍事動向は、国際社会全体の平和と安定にとって、これまでにない最大の挑戦をもたらしている」と訴えた。

 米下院外交委員会のマコール委員長(共和)は岸田氏の演説に、台湾の駐米代表(大使に相当)を招待した。中国が台湾への軍事・経済的圧力を強めるなか、日米が台湾を支援する姿勢を示すことを狙ったとみられるが、岸田氏は台湾には直接は言及しなかった。

 一方、ウクライナに関する部分では、議会内の温度差があらわになった。

 「私がよく申し上げている通り、今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」

 「もしも米国の支援がなかったら、モスクワからの猛襲を受けたウクライナの希望は、どれほど前についえ去ってしまっていたことだろうか」

 岸田氏が、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援の必要性を繰り返し訴えると、議員の多くが立ち上がって拍手し、演台の後ろに座るハリス副大統領(民主)も拍手を送った。だが、ハリス氏の隣のジョンソン下院議長(共和)は、こうした発言に拍手を送らず、トランプ前大統領に近いマージョリー・テイラー・グリーン下院議員ら一部の共和党議員も、座ったままだった。

 米議会では、ウクライナ支援をめぐって民主党と共和党との対立が激しさを増す。トランプ氏に同調する共和党の強硬派は、ウクライナへの支援に懐疑的な立場を取り、追加支援のための緊急予算の審議が停滞している。強硬派は、予算の審議を求めたジョンソン氏の解任動議を出し、揺さぶりも図っている。

 全体としては、岸田氏の演説は好評だったといえる。ステニー・ホイヤー下院議員(民主)は演説後、取材に「歴史を振り返ると、共通の価値観に基づく日米のパートナーシップは、いまでは並外れたものになった。岸田氏は非常にうまくそれを表現していた」と評価。「米国内で岸田氏の存在はあまり知られていなかったが、今回は岸田氏にも米国にも、すばらしい機会になったと思う」と語った。(ワシントン=清宮涼)

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